『秘本三国志 陳瞬臣』は他の三国志小説と何が違いますか?
三国志ファンが読んで、まず驚くのは、関羽が英雄視されていないことです。
陳舜臣の生家では関羽を祀っていたと聞きますし、尊敬の念もあったでしょうに、
その最期は、英雄でもなんでもない、老いぼれ将軍のみじめな死という感じです。
また、関羽の死を、張飛が特に嘆いていないのも意外です。薄情!
張飛は、かなりイヤな奴にされていて、その最期も自業自得という雰囲気。
人気のある孔明も、人間的にえがかれています。
最後に「さすが孔明」という未来予測をするのですが、それまでは軍事の苦手な実務家という感じ。
他に、少容という女性宗教家が、歴史のウラで活躍しているのも特徴です。
彼女の意見には、あの曹操でさえ従うほどのカリスマ性があります。
実在の人物らしいのですが、少容という名は陳舜臣が命名したはずです。
最後に、これは書くべきか迷いました。
これから秘本三国志をお読みになるのであれば、☆印の段落は飛ばして下さい。
☆曹操と劉備のあいだに密約があります。
☆劉備がさまざまな勢力に客将として参加し、そこを曹操が攻める。
☆そこがつぶれたら次の勢力に移り、曹操が勝ちやすいように、ウラで手引きする。
☆最終的に、劉備と曹操だけが残ったところで、どちらが中国の覇者になるのか決着をつけよう。
こんな三国志は読んだことがありません。
しかし、そのように仮定すれば、歴史上の劉備の動きに、納得できる部分があります。
その他、いろいろ違う部分が多いですが、事実をねじ曲げたりせず、あくまで正史に則って書かれている点、好感が持てます。
ただし、吉川英治や横山光輝のファンが読んだら、幻滅するかもしれません。
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